建設業を営むお客様では、承認業務の一部を紙で運用していました。
紙の申請書は、現在誰が確認しているのか、どこまで承認が進んでいるのかをすぐに把握することが難しく、承認プロセスが見えにくい状態になりがちです。また、書類の管理が担当者に依存しやすく、個人情報の保管や閲覧範囲を適切に管理するうえでも課題がありました。
本プロジェクトを担当したコクー社員は、現状の業務手順や承認ルールを整理し、要件整理、設計、検証、構築、移行、テスト、運用設計までを支援しました。支援時に大切にしたのは、システムを構築するだけで終わらせず、関係者がプロジェクトの現在地を把握し、認識をそろえながら進められる状態をつくることです。
本記事では、承認業務が抱えていた課題、支援を進めるうえで行った工夫、システム導入後に生まれた変化について紹介します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業界 | 建設業 |
| 支援期間 | 1年以上 |
| 仕様ツール | Excel関数、Power Query、VBA、マクロ |
| 担当範囲 | ヒアリング、業務棚卸し、要件整理、設計、PoC、既存環境の調査、実装・構築、標準化、自動化、移行、テスト、運用設計、改善提案 |
| 支援形態 | 常駐支援 |
お客様が抱えていた大きな課題は、紙で運用されていた承認プロセスの状況を、関係者がすぐに確認できないことでした。
紙の書類は、申請後に誰が保有しているのか、どの承認段階まで進んでいるのかを一覧で確認することが難しくなります。
そのため、承認が想定した順序で進んでいるか、適切な承認者が確認しているかを把握する際に、個別の確認が必要となっていました。
また、申請書類の管理方法が担当者の経験や判断に委ねられやすく、業務手順にもばらつきが生まれていました。
担当者以外が状況を確認しづらいため、承認の進捗だけでなく、運用ルールそのものも共有しにくい状態でした。
もう一つの課題が、個人情報を含む書類の管理です。
紙による管理では、誰が書類を閲覧したかを記録したり、閲覧できる人を細かく制御したりすることが難しくなります。
業務の利便性だけでなく、アクセス管理や履歴保持の観点からも、より適切な仕組みが求められていました。
支援担当者は、すぐにシステムの構築へ進むのではなく、まず現在の承認業務を整理することから始めました。
現状ヒアリングや業務棚卸しを通じて、申請から承認までにどのような工程があるのか、誰がどのタイミングで確認するのか、どのような情報を管理する必要があるのかを確認しました。既存のログや設定も調査し、現在の運用と新しい仕組みの間に抜け漏れが生まれないよう、要件を一つずつ整理しています。
設計後は、PoCによって実際の運用を想定した検証を行い、その結果を踏まえて構築、移行、テストへと進めました。単に紙の申請書を電子化するのではなく、承認履歴をデータとして残し、申請状況を確認できることや、利用者ごとに適切なアクセス権限を設定できることを重視しました。
同時に意識したのが、プロジェクトの進行自体を見えやすくすることです。
長期にわたる支援では、関係者が多くなり、作業の優先順位や完了状況について認識のずれが生まれることがあります。
そこで支援担当者は、プロジェクトを複数のフェーズに分け、ガントチャートで進捗を管理しました。
打ち合わせでは、現在どのフェーズにいるのか、何が完了しており、次に何を進めるのかを確認。
残っている作業を共通の資料で確認することで、関係者が同じ情報を見ながら判断できる体制を整えました。
業務の見える化を支援するだけでなく、支援の進め方そのものも見える化する。
そうした工夫が、関係者を巻き込みながらプロジェクトを進める土台となりました。
本プロジェクトで特徴的だったのは、システム上の承認フローだけでなく、プロジェクト全体の進捗にも「見える化」を取り入れたことです。
構築、移行、テスト、運用設計など、複数の工程を長期間にわたって進めるプロジェクトでは、担当領域によって見えている情報が異なります。
作業を進めている担当者には状況が分かっていても、ほかの関係者から見ると、どこまで進んでいるのか判断しづらいこともあります。
支援担当者は、こうした認識のずれを防ぐため、ガントチャートを打ち合わせ時の共通資料として活用しました。
完了した作業、現在進行している作業、今後対応する作業を明確にし、関係者が次のアクションを判断しやすい状態をつくりました。
課題が見つかった場合も、誰かの対応を待つだけではなく、影響する工程や残作業を整理し、実現可能な進め方を検討しました。
関係者が状況を理解したうえで役割を分担できたことが、円滑なプロジェクト進行につながっています。
システム導入後は、申請から承認までの履歴がデータとして保存され、承認状況を確認しやすくなりました。
紙で運用していた際には把握しづらかった「誰が承認したのか」「現在どの段階にあるのか」といった情報が明確になり、確認のために書類の所在を追う必要が減りました。意思決定に必要な情報へアクセスしやすくなったことで、申請から承認までの流れも、以前よりスムーズに進められるようになっています。
セキュリティ面では、利用者ごとにアクセス権限を管理し、操作や承認のログを保持できる環境が整いました。個人情報を含む申請データについて、閲覧範囲や履歴を確認できるようになり、ガバナンスの強化につながっています。
一方で、一部には正しい承認者が設定されていないなど、継続して見直すべき課題も残っています。
支援担当者は、構築時点で完了とするのではなく、実際の運用状況を確認しながら改善できる設計と体制づくりを進めました。
今回の支援から見えてきたのは、業務改善では、仕組みの構築と同じくらい、関係者が状況を理解できる状態をつくることが重要だということです。
承認フローをシステム化しても、承認者の設定や運用ルールが実態と合っていなければ、期待した効果を十分に得られません。
そのため、現在の業務を整理し、実際に利用する人の役割や判断基準を確認しながら設計する必要があります。
また、長期プロジェクトでは、支援内容だけでなく進行状況も共有することが、信頼につながります。現在地や残作業を明らかにし、小さな認識のずれを早い段階で解消することが、関係者を巻き込みながら改善を進めるうえで欠かせないと実感したプロジェクトとなりました。
今後は、システムを導入して終わるのではなく、運用開始後に見つかった課題を整理し、
より使いやすい承認フローへ継続的に改善していくことが重要です。
実際の利用状況を確認しながら、承認者の設定や運用ルールを見直し、担当者が変わっても安定して業務を進められる仕組みを整えていく。
今回の経験を生かし、業務整理から構築、運用定着、改善までを一貫して支援できる範囲を広げていきます。
紙運用からシステム運用へ。承認フロー見える化の流れ
| Before | EXCEL女子の支援 | After |
|---|---|---|
| 紙の申請書で運用 | 現状ヒアリング | 承認履歴をデータ化 |
| 承認状況が見えない | 業務棚卸し | 進捗を可視化 |
| 担当者ごとに手順が違う | 要件整理 | 手順を標準化 |
| アクセス管理が難しい | 設計・PoC/構築・テスト/運用設計 | 権限・ログ管理でガバナンス強化 |