「ExcelといえばVBA」
—— 長らくそう言われてきました。
定型業務を効率化したり、複雑な処理を自動化したりと、多くの現場で頼りにされてきた存在です。私たちEXCEL女子も、日々の業務の中でVBAに助けられ、ときにはエラーに悩まされながらも、「仕事を前に進める武器」として使い込んできました。
ですが、2025年の今、Excelの世界は大きな転換点を迎えています。
AIアシスタントが一瞬で関数やマクロを提案し、Pythonが公式にExcelに組み込まれたことで、VBAの役割に改めて疑問を持つ方も増えてきました。「もうVBAは必要ないのでは?」という声すら聞かれるようになっています。
では本当にVBAは役目を終えたのでしょうか。それとも、AI×Python時代だからこそ活きる場面が残されているのでしょうか。
このコラムでは、EXCEL女子の現場感覚を交えながら、最新トレンドを踏まえた「これからのExcel仕事術」について解説していきます。
Excelは「表計算ソフト」という枠をとっくに超え、ビジネスの現場に欠かせない“情報プラットフォーム”へと進化してきました。2025年、その進化はさらに加速しています。
大きなキーワードは 「AI」と「Python」。
さらにMicrosoftは、AI機能を日常業務に浸透させるべく継続的にアップデートを提供しており、「Excelはもう完成されたソフト」というイメージを大きく覆しています。
つまり2025年のExcelは、「作業効率化ツール」から「知的生産のための共創ツール」へと進化しているのです。
そして、その変化は、「VBAはまだ必要か?」という問いを改めて投げかけています。
AIやPythonが台頭する中で、「もうVBAは古いのでは?」という声が出るのは自然な流れです。
しかし、実際の現場に目を向けると、VBAは今なお根強く活躍しています。
毎月の請求書や帳票を整形し、所定のフォルダに振り分けてメール送信する
そんな定型処理は今もVBAマクロが担っています。
取引先リストを更新したり、商談データを加工してグラフ化する作業
VBAで自動化しているケースは少なくありません。
AIやPythonを導入するには「セキュリティ承認」「環境整備」「学習コスト」といったハードルがあり、現場では「すぐに動かせるVBA」が重宝され続けているのです。さらに、AIが生成したコードや数式を「本当に正しいか?」と検証するためには、VBAの基礎知識が欠かせません。あるユーザーはこう語っています。
また、外部システムとの連携や、ボタンひとつで複数の処理を一括で動かすといった「現場ならではの痒いところ」に手が届くのもVBAならではの強みです。
PythonやAIが得意とするのは分析や高度な予測処理ですが、「毎日繰り返す作業を一瞬で終わらせたい」というニーズには、依然としてVBAが最適解になる場面が多いのです。
2023年にプレビュー版として発表された「Python in Excel」は、2025年の今では正式に実務活用できる段階に入りました。これまでExcelだけでは難しかった「大規模データの分析」や「機械学習の導入」が、追加ソフトなしでセル上から直接できるようになったのは大きな革新です。
Python in Excelの強みは、なんといっても 「分析の幅が一気に広がる」 ことです。
従来は「Excelで集計 → Pythonで分析 → PowerPointに貼り付け」と分断されていた業務フローが、Python in Excelにより 「Excelひとつで完結」 するようになりました。
これは現場のユーザーにとって非常に大きな時短効果をもたらしています。
ただし万能ではなく、弱点も存在します。
Python in Excelはクラウド環境で処理が実行されるため、不向きな業務もあります。
ここは、依然としてVBAやPower Automateの出番になります。
つまり、「分析・予測のPython」×「自動化のVBA」 というすみ分けが現実的であり、現場のExcelユーザーは両者を適材適所で使い分けることが求められるのです。
「もうAIやPythonがあるから、VBAは勉強しなくてもいいのでは?」
—— 2025年の今、多くのExcelユーザーが一度はそう考えたことがあるかもしれません。
確かに最新のツールは便利で、業務を大きく効率化してくれます。
しかし、VBAを学ぶことには依然として大きな価値があります。
多くの企業では、依然としてVBAが組み込まれたExcelファイルが日々の業務を支えています。
こうした業務は、PythonやAIを導入するよりも「既存のVBAマクロを動かす方が速い」ケースが少なくありません。VBAスキルを持つ人材は、今も現場の即戦力として求められているのです。
CopilotやChatGPTが生成するVBAコードは便利ですが、常に正確とは限りません。
エラーが出たときや、業務に合わせた微調整をする場面では「コードを読んで直せる」力が不可欠です。
つまりVBAは、AIを“鵜呑みにする”のではなく、“活かしきる”ための基盤スキルとも言えます。
VBAはExcelという馴染みある環境の中で動くため、初心者でも抵抗なく学び始められます。
といった基本的なプログラミング思考を身につけられるので、PythonやRPA、さらには本格的なシステム開発へとステップアップする「入り口」として最適です。
意外かもしれませんが、「VBAが書ける人材」は2025年の今も採用市場で需要があります。
理由はシンプルで、AIやPythonを導入する前に「VBAで動いている資産」がまだまだ膨大に存在しているからです。VBAを理解している人材は、レガシー環境と最新ツールの“橋渡し役”になれるため、組織にとって貴重な存在といえるでしょう。
AIやPythonを取り入れることでExcel業務は劇的に効率化されますが、そこには見逃せない 落とし穴 も存在します。便利さの裏側に潜むリスクを理解しておくことは、これからのEXCEL女子にとって欠かせません。
AIが生成する数式やVBAコードは、時に誤りや非効率な処理を含むことがあります。
こうしたリスクを防ぐには、最低限のExcel基礎力やVBA知識を持ち、AIが出してきた答えを「検証する目」を養うことが重要です。
CopilotやChatGPTにデータを入力すると、それがクラウド上で処理されるケースがあります。
顧客情報や財務データなどを不用意に扱うと、情報漏えいにつながる危険性も。
AIがあまりに便利なため、「自分で考えなくなる」リスクも見逃せません。
毎回AIに数式を聞いているうちに、基礎的なExcel関数を忘れてしまったり、単純なロジックが組めなくなったりすることもあります。
これを防ぐには、AIを先生ではなく“パートナー”と位置づけることが大切です。まず自分で考えてからAIに聞く、AIの提案を見て理解する、といった姿勢を意識することで、スキル退化を防ぎながら成長につなげられます。
AIやVBAを組み合わせれば、業務をどんどん自動化できます。
ただし、「ブラックボックス化した自動処理」はトラブル時に誰も直せなくなる危険性があります。
といった “メンテできる仕組み” を作ることが肝心です。
2025年のExcelを取り巻く環境は、まさに大きな変革期にあります。
AIの登場により「誰でも高度な分析ができる」時代になり、Pythonの組み込みによってExcelは単なる表計算ソフトから「データ活用プラットフォーム」へと進化しました。その一方で、現場を支えてきたVBAの価値も依然として失われてはいません。
ここで大切なのは、「どの技術が生き残るか」を議論することではなく、「どの技術をどう組み合わせて活かすか」を考える視点です。VBAで日常業務を効率化し、Pythonで高度な分析を行い、AIアシスタントで作業を加速させる。これらを柔軟に組み合わせることで、Excelはこれまで以上に力強い武器になります。
そして、これからの時代に求められるのは “作業をこなす人材”ではなく、“仕組みを考え、活用できる人材” です。
EXCEL女子として現場を支えてきた経験や知識は、まさにその力の源泉。
新しい技術を取り入れると同時に、「なぜ必要なのか」「どう使えば組織に役立つのか」を見極められる視点を持つことで、AI時代における唯一無二の存在になれるはずです。
最後に——AIやPythonの進化に戸惑う必要はありません。
大切なのは「Excelを通じて、どう未来の働き方を描くか」。
EXCEL女子は、その先頭に立ってDXを推し進める存在になれると私たちは信じています。
“Excelをもっと自由に、もっと未来志向に。”
これが、2025年を生きるEXCEL女子の合言葉です。