多くの企業が業務改善に取り組んでいますが、急な改革により現場の混乱を招くだけで失敗してしまうケースも少なくありません。
業務改善を成功させるためには、うまくいかなかった事例から学んで同じ失敗を繰り返さないようにすることが大切です。
そこで今回は、実際の失敗事例や注意点を多数紹介しながら、業務改善が失敗する要因や成功させるためのポイントを具体的にご紹介します。
業務改善とは、自社の業務内容や生産プロセスを見直すことで業務効率の改善を行い、企業全体の生産性を向上させるための取り組みのことです。
近年では働き方改革推進や労働人口減少を背景に、より多くの企業が業務改善を重視し意欲的に取り組むようになりました。
業務改善のキーワードとして混同されがちな「生産性向上」と「業務効率化」は、実は異なる概念です。
生産性向上は「企業の持つリソースを最大限活用して今まで以上の成果を生み出すこと」を指しますが、業務効率化は業務の「ムリ」「ムダ」「ムラ」を発見・排除する取り組みを指します。
つまり業務効率化は生産性向上を達成するための手段にすぎないため、それぞれの定義や施策の目的を混同してしまわないように注意しましょう。
生産性向上させる方法に関しては、こちらのブログをご覧ください。
「ECRS(イクルス)の法則」で最適化!業務の見直しで抑えておきたい4つの視点とは
まずは多くの企業が陥りやすい、業務改善の失敗原因を4つみていきましょう。
目標は抽象的な表現ではなく、定量的な数値目標と定性的な行動目標を具体的に組み合わせなければ、実際の改善にはつながりません。
例えば「残業削減」を目標にするのであれば、「4月末までに残業を30%削減する」「そのために業務自動化ツールを導入する」などの、第3者からみても理解しやすくPDCAを回せるような設定を行うことが大切です。
適切な目標設定を行うためには、改善したい業務の内容やプロセスを過不足なく可視化し、課題点を洗い出すことが必要になります。
トップダウンの施策や担当者へのヒアリングだけでは表面的な課題しかみつからない可能性があるため、「誰がどの作業をどの工程で」「なんのために」「所要時間は」など細かなポイントを数値化して根本的なボトルネックを明確にできるようにしましょう。
現場の声を無視して業務改善を進めると必ず失敗します。
例えばよくあるのが「業務改善のためITツールを導入したが、定着せずムダになった」というパターンです。従業員へツール導入の目的やメリットの周知が不十分だったり、業務マニュアル配布だけで現場にツールの活用を丸投げしたりするような業務改善では、社内の不満を招くだけで終わってしまいます。
業務改善のためシステムやツールの導入を検討する企業が増えています。
しかし使用方法や機能、価格に気を取られてしまい、根本的な課題解決とズレがあるツールを選択してしまう企業も少なくありません。
課題にマッチしないツールを業務フローに組み込んでも、結局現場で定着せず以前の処理方法に戻ってしまいます。目的を見失わないように意識しておくことが重要です。
ここではより具体的な失敗事例を3パターンご紹介します。
業務改善ツールを導入したA社の場合、膨大なマニュアルを手渡したのみで改善方法や手順は現場任せにしてしまいました。
しかしマニュアルは業務フローに沿っておらず読み解くのも難しい内容で、現場社員は困り果てて結局慣れている元のワークフローに戻ってしまったのです。
業務改善は定着するまで現場社員に負担がかかることは避けられません。
そのため現場がスムーズに受け入れられるよう、改善プロセスと現場の仕事にズレがないか確認し、現場の理解を得るための準備を整えた上で展開することが大切です。
デジタル化を進めるためにITシステムやツールを導入する企業が増加しています。
B社でも「とりあえず他社も使っている有名ツールを導入してみよう」と業務改善に着手しましたが、現場からは「使いこなせない」「ほしい機能がない」「なぜ導入したのかわからない」など不満が続出してしまいました。
RPAなどの業務改善ツールは万能のように感じるかもしれませんが、企業によって業務内容や課題はそれぞれ異なるため、必ずしも自社にとってベストな選択とは限らないことがあります。
ツールやシステム導入には多額の投資が必要になるため、適切なツール選択には業務改善の専門家や外部企業へアドバイスを求めることも検討しましょう。
時間や場所にとらわれないリモートワークの導入が進んでいますが、出勤しないことによるデメリットもあります。
感染症拡大の影響でリモートワークを解禁したC社では、見た目ではワークライフバランスが整って残業も減り、業務改善が進んだように見えました。
しかしその一方で、現場では「気軽にコミュニケーションがとれない」「仕事への姿勢や稼働時間が把握できない」「仕事の振り分けが困難」などの混乱が発生していました。
リモートワークには物理的な距離が発生するため、うまく業務改善につなげるにはコミュニケーションツールの確保やオンラインでの業務・タスク管理方法の確率、管理者の育成、などの条件をクリアすることが重要です。
業務改善をスムーズに成功に導くためには、現場とともに課題を探り、目的意識を共有して一丸となって取り組むことが欠かせません。
ここでは業務改善の進め方を4ステップで解説しますので、取り組みの参考にしてみてください。
目的の設定では、できるだけ定量的かつ定性的に設定し、全社員が理解しやすく、客観的に数値化できるようにしましょう。
例えば「スキルアップを支援し、個人の業務効率をあげて残業を削減する」「業務のムリ・ムダ・ムラをなくし、10%以上のコスト削減を目指す」などです。
企業として目指したい価値観が反映される部分なので、納得できるまで議論しましょう。
次は、部門や担当者ごとに時系列で「誰」が「どの業務」に「どれだけの時間」をつかって「どのような成果をだしているのか」を可視化します。
業務の棚卸しでみえてきた課題から、例えば「手で入力作業をしている」「今は使っていない紙資料を慣例で保管している」「特定の作業が属人化してしまっている」などの、生産性を低下させている原因を明確にしましょう。
生産性低下の原因特定ができたら、「業務廃止・手法のアップデート・業務体制の再構築」の3パターンから、優先順位をつけて改善施策を選択していきます。
まずは、ムダな業務や他部門と重複している業務、必要性のあまりない業務は廃止しましょう。
次に、なくすことはできないが手間がかかる業務は、RPAやシステムによる手法の効率化を検討します。
最後に、必要だが生産性の低い業務をBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)したり、派遣や外部企業へ委託したりできないかを検討しましょう。
具体的な改善施策を打ち出す際は、一緒にスケジュールも検討しておくのがおすすめです。
BPOに関して、こちらの記事もご覧ください。
バックオフィスをBPO!アウトソーシングとの違いや導入メリット、事業者の選び方まで解説
改善施策を実際に運用していくステップでは、スケジュール通りにいかないことがほとんどです。
最初に決めた数値目的を達成できているか、現場に不満がたまっていないか、改善策にズレが発生していないかなどをチェックしながら進めていきましょう。
無理やり施策を敢行するのではなく、従業員の合意をとりながら、自社のペースでPDCAを回し続けることが重要です。
今回は業務改善でよくある失敗原因や、失敗例を具体的にご紹介しました。
どのケースでも、現場を無視してトップダウンで施策を決め、現状にあわない改善策を進めた結果、定着せずに終わっていることがわかります。
もし業務改善に取り組んで「うまくいかない」「効果がでずに迷っている」「誰かに相談したい」と感じたときは、EXCEL女子までお問い合わせください。
EXCEL女子はITスキルをもった業務効率化の専門家集団です。身近なExcelを使った低コストな業務改善・自動化のサポートだけでなく、社員のスキルアップ研修、DXツール選定のアドバイスなど、さまざまな伴走支援を行っています。
ぜひ一緒に業務改善を実現させましょう。