「労務データの分析と可視化により、より良い人事戦略や労務管理をしていきたい」などのお困りごとを解決いたします。勤怠管理、給与計算の迅速化、労働統計の正確な分析を実現し、労務管理の効率を高めます。
更新日:2024.06.04
目次
労働条件明示のルールが2024年4月から改正されました。
今回の改正は正社員はもちろん、パートタイムや派遣社員などの非正規社員などすべての雇用形態に関わる変更です。
特に人材派遣では派遣法に基づいて用意すべき書類もさまざまで、派遣先・派遣元・派遣社員の3者間での労働条件明示は労使トラブルを避けるためにも欠かせないプロセスです。
そこで本記事は、これから労働条件明示のルールに対応しなければならない担当者へ向けて、労働条件明示変更の背景理解から、具体的なルール改正内容を詳しく解説します。
後半では労働条件通知書に追記すべき内容やテンプレート紹介、罰則規定についても触れていますので、ぜひこの記事をよく読んで労務管理にご活用ください。
なぜ2024年4月1日から労働条件明示ルールが改正されたのか、まずはその背景を確認しましょう。
労働条件明示書とは、使用者が労働者と雇用契約を結ぶ場合、交付が義務付けられた書類のことです。
労働基準法第15条第1項で「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と明記されています。
労働条件明示書には、
を記載します。
今回2024年4月からのルール改正には
の法改正が背景にあります。
無期転換ルールとは、有期雇用労働者が同一雇用者のもとで通算5年以上勤務すると無期雇用契約に転換可能な権利が発生する、という制度です。
今回のルール改正の主な目的は、
です。
実は、無期転換ルールの施行から5年以上経ちますが、まだ多くの企業で把握されておらず活用されているとはいえません。
政府としては無期転換ルールの普及を促すことで「多様な正社員雇用」を促進し、さまざまな働き方を普及させたい意図もあります。
現在の労働市場は「正社員と非正規雇用者」の2極化が進む状況です。
しかし今後は従来の総合職のような働き方ではなく、勤務地や労働時間に縛られない「多様な正社員」の採用が求められています。
多元的な働き方を促進することで、
などを支援し、全体的な労働環境の質向上が期待されているのです。
それでは、2024年4月1日から変更される労働条件明示のポイントについて詳しく見ていきましょう。
新たな労働条件明示では、全労働者に対して「将来の配置転換などで変更される可能性のある就業場所・業務の範囲」の明示が義務化されます。
この改正は正社員や派遣労働者などの区別なくすべての労働者に適用されるため、すべての企業が対応しなければなりません。
有期雇用であれば定期的に契約更新を行うため、その都度労働条件明示書により予想される就業場所・業務の範囲の変更を行いましょう。
その場合は就業場所や業務の変更範囲を限定せず、
など広く記載しておきましょう。
労働条件明示の改正後は、契約社員や派遣労働者などの有期契約労働者に対して「通算契約期間や更新回数の上限」を通知することが義務化されました。
具体的には
などと、労働条件明示書に記載する義務が発生します。
契約時や更新時はもちろん、特に更新上限の新設や短縮などの条件変更がある場合には事前に労働者へ説明することが大切です。
派遣労働者などの有期雇用労働者には、同じ雇用主との間で通算5年以上勤務した場合、希望すれば無期労働契約へ転換できる「無期転換申込権」が発生します。
労働条件明示の改正では、先ほどの無期転換申込権に加え、無期転換後の労働条件も一緒に明示することが義務化されています。
なお、2021年4月に適用された「同一労働同一賃金」にのっとり、正社員と非正規雇用労働者の間に
などの待遇差が発生してはなりません。
無期転換申込権が発生する契約更新時までに用意しなければならないため、正社員の職務内容や労働条件などを考慮して設定することが大切です。
それでは次に、企業が労働条件明示ルールの変更に伴い、対応すべき3つの項目をみていきましょう。
まずは、労働条件を記載した書面「労働条件通知書」をルール改正にあわせて見直します。
厚生労働省の「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」というページで「モデル労働条件通知書(テンプレート)」が公開されていますので活用しましょう。
もし労働条件通知書にすべての条件を記載するのが難しい場合、必要な項目は就業規則に詳しく記載しておくのがおすすめです。
なお、派遣社員を雇い入れている場合は、労働条件通知書の変更に合わせて人材派遣会社が作成する「就業条件明示書」の改定が必要な場合もあるため確認しましょう。
会社に有期契約労働者を雇い入れている場合、それぞれの社員ごとに「無期転換申込権」の発生タイミングを明確にしておきましょう。
あらかじめ通算勤務期間やこれまでの更新回数を把握しておくと安心です。
また、今回の労働条件明示ルール改正により新しく更新上限を新設・変更する場合はきちんと説明をしてから変更する必要があります。
無期転換後の労働条件明示は必ず書面交付することが求められるため、事前に対応方法を検討しておくことが大切です。
基本的に、有期労働契約者から無期転換の申し入れがあった場合、雇用主は拒否することができません。
有期雇用者は契約期間内であればどのタイミングで無期転換の申し入れが可能なので、無期転換後に適用する労働条件や就業規則などはあらかじめ決めておき、書面化しておくと慌てなくてすみます。
労働条件の明示は使用者の義務なので、労働基準法第15条第1項第121条により違反者には30万円以下の罰金が課されます。
また金銭的負担以上に「ルールに違反した企業」として口コミが広まると、
などさまざまなデメリットにつながりかねません。
単なるルール変更と軽く捉えるのではなく、きちんと改正内容を把握して労働条件明示書に反映させることが重要です。
今回の労働条件明示ルールの改正では有期労働者への通知義務が増えたため、今以上に労務管理を徹底し、新ルールへの過不足なき対応が求められます。
もし「人手不足で労務まで手が回らない」「今回の改正にどう対応すればいいかわからない」「人事アドバイザーがほしい」などお困りでしたら、EXCEL女子によるDX支援サービスもございます。
バックオフィスの業務効率化で悩みの方は、私たちへご相談ください。
『ITエンジニアのような高度な技術は必要ないものの、普通の事務作業以上のことを望んでいる』
そんな要望にお応えできる人材が、あなたの会社をサポートいたします。