更新日:2024.07.25
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「建設業界の2024年問題」解決に向け、多くの企業がBIツール導入によるDX化・業務効率化を進めています。いわゆる「2024年問題」とは、2019年に施行された働き方改革関連法による、時間外労働の上限規制が月45時間・年間360時間に変更されたことで発生した労働環境課題のことです。
特に36協定(サブロクきょうてい)による長時間労働が常態化していた建設・運送業界において、2024年3月には猶予期間が終了するため、多くの企業が対応に迫られています。
その中で「建設業界の2024年問題」の解決策として、注目を集めているのがビジネスインテリジェンス(BI)ツールの導入です。
この記事では、なぜBIツールが建設業界の救世主になり得るのか、BIツールにおける業務効率化やDX化の効果、具体的な活用方法について詳しく解説します。
BIとは、ビジネスの意思決定をサポートするソフトウェアです。分散しがちなデータを一元管理し高速処理できるため、現場の業務効率化やコスト削減、経営品質の向上など、様々なメリットが期待できます。
データ管理のほか、設定したデータを定期的に観測・グラフ化するレポーティング機能や、高度な要因分析やデータマイニング機能、経営計画を立てるためのシュミレーション機能などが利用可能です。
建設産業はDX化が遅いと言われがちですが、AIやIoTの活用、ドローンによる現場調査、ICT建機による工事の効率化など、デジタル技術の導入は確実に進んでいます。
国土交通省も建設現場の生産性向上のため「i-Construction」に取り組み、建設生産プロセスに3DデータやICTを活用するなど、自動化・効率化を推進してきました。
しかし、まだまだ建設業界にはDXで解決すべき課題が残されています。
建設業界の労働課題として、危険な現場工事が多いことや人手不足、高齢化、長時間労働の常態化などがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
建設業界は、他の業界よりも高齢化問題が深刻だといわれています。
2021年に一般社団法人日本建設業連合会が発表した「建設業ハンドブック2021」によると、2020年段階で建設産業は36%が55歳を超えている一方、働き盛りである29歳以下は12%しかいません。
建設業界の高齢化に歯止めをかけるためにも、現場主義などの古い労働体制を改善し、適切なデジタル化を進めることが求められています。
人手不足は建設業界の深刻な課題のひとつです。
労働者の高齢化のほか、肉体労働であること、長時間労働の常態化などが要因となり、なかなか人材の定着率も向上していません。
「建設業ハンドブック2021」によると、建築産業の就業者数は1997年以降減少し続けており、2020年には492万人と最盛期よりも3割近く減少しています。
重層下請構造とは建設業や製造業で一般的な組織形態です。元請け企業が受託した工事はまず1次受け企業に委託され、さらに2次・3次請け企業に委託される、という階層構造になっています。
ひとつの工事にたくさんの企業が関わるため、責任の所在が不明瞭になったり、DXや業務改善が行われにくい、現場スタッフに十分な報酬が支払われない可能性があるなどが、重層下請構造のデメリットです。
専門性にあわせた分業化は必要ですが、業務効率化を推進するにあたっては建設業界の労働体制改善が急務だといえるでしょう。
建設業界においてBIツールを導入すると、それまで現場の肌感覚で進んでいた業務を明確に数値化することができます。
ここでは、BIツールの具体的な効果とメリットを3つみていきましょう。
BIのレポーティング機能を使えば、各部署のデータを集約・可視化し、現状や課題点をスムーズに把握することが可能です。
すると、効率化を妨げているボトルネックや、無駄にコストがかかっているポイントを客観的に確認できるため、企業全体の生産性向上・業務効率化につながります。
BIではシステムを横断して複数の情報源から関連データを分析できるため、人の目では気づけなかった予想外のリスクや課題を発見できます。
リスクレベルや各データの関連性も示してくれるため、起こりうる問題を未然に防いだり、アクシデントへの早期対応・早期解決にもつながるでしょう。
データの深堀りや関連づけ、多角的な分析など、精度の高い経営戦略立案にはどれも欠かせません。
BIツールを使えば、誰でも簡単に高度なデータマイニングを行うことができるため、企業のデータ解析や意思決定のスピードを格段に早めることができます。
BIはただ導入すれば成果がでるわけではありません。
建設業界において、効果的にBIを活用するためにも「現状分析→計画立案→効果検証」のサイクルを意識することが重要です。
ここでは、具体的なBIツールの活用ステップを確認しておきましょう。
まずは、BIツールで下記の3種類を整理・分析します。
①自社の財務状況
②実行予算と実績の比較
③営業データ
伸ばすべき利益率の高いポイントと改善すべき高コストな分野を明確にし、過去データに基づいて経営分析を行いましょう。
また、建設業界は受注産業です。顧客獲得に向けて過去の営業データを分析し、傾向を明確にしておくと役立ちます。
現状分析で確認した過去データに基づき、プロジェクトごとに経営計画・目標を立案しましょう。
このとき、目標が机上の空論では意味がありません。
確実に黒字化する計画を立てるため、プロジェクト内容に応じて受注率や限界利益率などを設定し、BIツールで千から1万パターンほどシュミレーションを行ってみましょう。
シュミレーションを行えば様々な目標設定パターンを確認できるため、自社の再現可能性が最も高いパターンを選出し、目標にするのがおすすめです。
決定した経営計画に基づき、予算と実績を随時管理します。このとき、BIツールによるあらゆるデータの数値化が役立ちます。
建設業界は着工から完成までが長期間に渡るため、工事スケジュールから予算・利益、税金などを一元管理することで、異変を早急に察知するなどリスク管理も可能になります。
なお、毎月の推移を追うよりも決算期の利益や税金などを意識しつつ工事のスケジュールを管理するとよいでしょう。
今回の記事では、建設業界におけるBIツール導入の効果や、活用ステップについて詳しく解説しました。
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